スチャダラダラした目から見たもの

スチャダラパーは聴いていた。しかし、ユーモアが苦手だった。今は「あれはあれでよかった」と思うし音楽はユーモアだけではないので、つまりそれを聴いていた10代の私は電気GROOVEの歯に衣着せぬトークが好きだったので、物足りなかったのではないか。
あと、L.B.Nation周辺ではキミドリが雑誌のele-kingで紹介されていたのでCDを持っていた。アルバム『キミドリ』は「つるみの塔」が中学生が大人に悪口言ってる感じしかしなかったけど、後に出た「Oh, What a Night!(オ・ワ・ラ・ナ・イ)」は今でもたまに聴くぐらい好きである。かの有名なスチャダラのブギーバックと同時期ぐらいに出たパーティー賛歌だったけど、テーブルのピザをビールで流し込んでお調子者が突如登場、みたいなホームパーティ感はなく、「終わらない夜 君のこと 踊り続けよう こんな日は」という女の鼻歌が耳をからかう、いつまでも音楽が終わらない都会のクラブ感がする格好よい曲だった。
私は電気GROOVEが好きで、ele-kingを真に受けて、デトロイト・テクノを真に受けた10代だったため、高校生のくせにテクノのクラブによく行っていた。テクノは歌がないし、ストイックに四つ打ちのビートが延々と流れる。PLASTIKMANやBasic Channelが流れると歓声が上がる世界なので時々辛くなり、5分ごとに時計を見るような状態になるが、テクノが好きなので帰れない。本当に辛い。そういうとき、頭の中にキミドリのMC、KURO-OVIの「オワラナーイ!」という声が頭に浮かんだ。終わらないなあ、終わらないなあ、と思ってたら朝方、最後に「Hi-tech Jazz」や「Step to Enchantment」などのわりとメロディアスなテクノがかかって終わる。
今ネットで調べると、ブギーバックが94年、オワラナイが96年、LAMP EYEの「証言」が96年ということだから、このあたりの時系列は今から見るとごっちゃになりそうだけど、あとはダヨネも94年だという。LAMP EYEのYOU☆THE ROCKの「スチャダラダラした目から見たもの」というリリックは、スチャダラに感じていた私の違和感と共通していたけど、全体的に「なんか怖い!」という印象が強すぎた。私は不良が怖いのである。
2011年になってスチャダラのライブを見た。大震災の年だ。東電に向かってちょっと政治的なことを言っていた。客層がみんな30代後半以上の感じで家族連れもちらほら。懐メロだ。すごく楽しかった。スチャダラダラしていた。相対性理論も出てた。スチャダラに対するわだかまりも消えた。スチャダラダラした目も必要だ。そのしばらく後、原発反対デモでシンコもサウンドデモでDJしていた。好きなミュージシャンが反対しているから原発反対だ。今から都知事選の投票に行きます。原発だけではなく、ちゃんとスチャダラダラした生活が送れる、社会福祉政策をちゃんとやりそうな候補に投票します。